PC版もプレイ済みです。長くなります。すみません。

【追加要素について】

■クロックモード。ミニゲーム。
（0時、1時…と時報ごとに攻略キャラ＋主人公が少しだけ話します。ライター様もツイッターで書かれていましたが、各キャラの好み、生活スタイル、思考などが分かって意外に面白いです）

■アフターエピソード。
（PC版にもハッピーED後のおまけストーリーがありましたが、そのおまけの更にアフターのエピソードがあります。もちろん、おまけもアフターもゲームと同じ仕様でフルボイスです。おまけ、アフター共にスチル有）

■各種諸々
（PC版では個別ルートがほぼなかったバサラに、他キャラより短いですが個別ルートが追加。各キャラ新規イベント&スチル。PC版で書き足りないと言われていた話部分の補足。受ける依頼の選択時に、各攻略キャラが依頼に対しての胸の内を記している一言があるのですが、これがボイス付きになっています。色々と芸が細かい!!）

【主人公について】

主人公の天現寺橋は29歳。全キャラに対して受けの立場ですが、精神的には攻めになるキャラもいます。
攻略キャラも29歳、32歳など年齢高め。妖（あやかし）である四谷に至っては800歳です。
ちなみに、年齢高めですが変なおじさん臭さはありません（笑）。
少年特有の若々しさは欠片もありませんが、年相応の言動で安心出来ます。

何より!!
主人公の言動に苛々させられません。
乙女・BL共に、主人公が軽率だったり、無知だったり、身勝手だったりしてイラっとすることも多いのですが、天現寺橋にはそれがありません。
むしろ、このゲームの登場人物の中でもトップクラスの聡さですし、自分や他人の心情をかなり客観的に捉えています。

それと、正義感の強い主人公にありがちな『それは間違っている！』といった決めつけによる否定をしないのも魅力だと思いました。
天現寺橋は陰陽師なので、色々な依頼を受けて様々な事情を抱えた人や妖（あやかし）に出会います。
時には、プレイヤーから見ても「え？そんな風な考え方するの？」っていう相手もいますが、その相手に対して頭ごなしに否定の言葉を投げません。
視野が広く、相手が言葉にしない、気づいていない奥底の感情や想いを理解しているため、天現寺橋の言葉でプレイヤー側がハッと気づかされる場面もあるくらいです。

ただ、育ってきた環境が特殊なので、万人受けしそうな『一生懸命がむしゃらに頑張る』といったタイプの主人公ではありません。
気怠げで貞操観念が低くて（これも事情がありますし、基本的に共通ルートだけです）、やる気のなさげな言動が目立ちます。
しかし、とある攻略キャラが言うように根底では優しいタイプの主人公です。

それからこれも重要ですが、強いです。
BLでは結構多いのですが、『始めは強いけれど、読み進めるごとに何も出来ない弱い主人公になるというパターン』とは違います。
攻略キャラに極めて強い妖（あやかし）である四谷がいるので全てのルートでというわけではありませんが、攻略キャラよりも主人公の方が強いんじゃないかと思う場面も多々あります。
とにもかくにも、エンドまで安定した強さです。

個人的には、今までプレイしたBLゲームの中では一番好きなタイプの主人公！
色々な意味でかっこいいので、下手をすると攻略キャラよりも受けの主人公に惚れそうです!!（笑）

【ストーリーについて】

前半は、舞い込んでくる依頼を選択して受けていくことになります。
依頼の総数は26個。
これを各キャラ13～14個こなすと個別ルートになります。
依頼ごとに好感度の上がるキャラが決まっていますし、特定の依頼をクリアすることで出現するものもあります。

後半の個別ルートにはいると、バサラは1章、他キャラは2章に分かれたストーリーになります。
バサラはともかく他キャラはしっかり量があると思います。
依頼を含め、多少怖い場面もありますが、全体ではそれほどの量にならないので全くダメという人以外は大丈夫だと思います。
PC版の18禁シーンを置き換えている場面も、その手のシーンを削って終わりではなく、残せる文章などは残して上手く活用し、甘～い場面に仕上がっています。
おまけもアフターも穏やかで甘い仕上がりになっているので、糖度は格段に上がっていると思いました。

尚、個人的なお勧め攻略順は（バサラor上大崎）→目黒→四谷。

バサラの個別で登場する男については、四谷ルートで分かるようになっているのでバサラを先にする方がいいです。
上大崎の個別で天現寺橋の過去や過酷な成長環境が分かるので、ここを先に読んでおくと天現寺橋を理解しやすいと思います。
目黒の個別では四谷と立ち位置が分かれますし、何より四谷が怖いです！
先に目黒をやっておかないと四谷が好きならつらくなるかもしれません。

そうは言っても個別ルートで他キャラルートのネタバレが存在しないので、基本的にどのルートからでも大丈夫です。
尚、おまけはハッピーエンドクリアで見られますが、各キャラのアフターはそのキャラの全エンド（全シーンかな？）をクリアしないと見られませんので、こまめにセーブデータを残しておくことをお勧めします。
また、依頼は全選択肢を選ぶとタイトル画面にある『scene』に登録されて、いつでも読めるようになります。

余談ですが、四谷は古くからの妖（あやかし）なので今は使わないような言い回しをする場面もあります。
私は日本語としても音としても、とても綺麗だと思いましたし、年月を感じさせる工夫だとも思いました。
また、会話文において天現寺橋は『言う』というような現代表記に対し、四谷は『云う』というような表記になっているところも、ライター様の工夫がされていて面白いです。

【システムについて】

必要な機能はほぼ揃っています。
クイックセーブ、ロードはもちろん、バックログからの巻き戻し、チャプタージャンプ、既読文章&選択肢の色分け（オンオフ可）、主人公含め各キャラボイスのオンオフ可、ボイスセーブなどなど。

【総評】

粗を探せば色々とあるのでしょうが、それでも総じて素晴らしい出来だと思いました。
今のところ、FDが決まっていないBLの中では一番作ってほしいゲームです。
【東京陰陽師】を作っているTYRANTは【紅色天井～】や【大正メビウスライン】制作のLove Deliveryさんの姉妹ブランドです。
Love DeliveryさんはFD制作されるので、姉妹ブランドのこちらもFD出るんじゃないかな、出てほしいなと期待しています!!