「七年前の自分から届いた手紙」と「世界への違和感」、そして「神の力」…
これらのフレーズに惹かれ、タイムスリップ（ループ）物かな？ と思い購入しました。
プレイしてみると確かにその要素も入っているのですが…それよりはっきりとした題目があります。

それは 『恋に狂った神と、それに巻き込まれた子供達の物語』 であり
平行して ＜それぞれの過去のトラウマ・弱さを乗り越える為の試練＞ ――というもの。

まずシナリオ…昨今の乙女ゲーにしては珍しくボリュームが多く、１～２日でのフルコンプは到底無理（笑）
ＥＤも 『帰還・混沌・真相・滅亡』 の４種が存在しており、真相√は２週目以降にしか開きません。
真相を見てようやく、３兄弟それぞれの立場･役割が見えてきて、その行動にも納得がいくようになります。
これは斬新…特にアキラには正直度肝を抜かれました（笑） 上手い演出だと思います。

序盤は何の変哲も無い "学校でのイジメ" や、"攻略対象達との交流" について描かれるのですが、
気付いた時にはもう非現実的な現象に巻き込まれていて…誰が敵か味方かも判らない。
先読みできないその展開に、これからどうなっていくんだ！？ と興味をそそられる――が、
キャラ達の立場（特に３兄弟）が不明な初回プレイでは、じりじりするばかりで、余計に話が長く感じる。
ここを 「丁寧」 と取るか 「ダルい」 と思うかで、まず大きく評価が分かれるかと…
（私は、回想シーンを繋げただけのようなソフトに飽き飽きしていたところだったので、普通に楽しめました）

ただ主人公が、設定故に内向的で根暗とも言える性格なせいで
必要以上に行ったり来たりしてる部分があるので、そこは少々くどいと感じる部分がありました。
攻略キャラの心理描写はしっかりしており読み応えは十分なのですが、
その辺はもう少しすっきりさせた方が、メインの 『神々の事情』 に浸れて良かったかもしれません。
あと気になる点といえば…やはり絵ですね（汗） 繊細なタッチは嫌いではないのですが、安定していないので
折角のイラストで萌えられない。キスシーンでときめかなかったのはこのソフトが初めて…（ごめんなさい）
特に主人公の顔グラ…何故立ち絵（名前決めや好感度で見れるやつ）をそのまま使わなかったんでしょう？
あれ可愛いのに見られないので正直残念です。台詞アイコンがどれも異性を無条件に惹きつけるほど
魅力があるようには見えなかったのが勿体無い…もうちょっと頑張って欲しかった。
もう一つ欲を言えば、攻略キャラ達にも３兄弟のような 『神衣装』 の立ち絵が欲しかった…
シリアスな場面なのに全く同じポーズ＆服の２人が並んでて、気が抜けてしまったり（汗）

で、このソフトで一番面白いのが――
＜クリア後、ＢｌａｃｋＰｏｓｔに届く手紙（アナザーシナリオ）を読んで初めて、そのキャラを攻略できたと言える＞

という点…　おまけがおまけではなく、本編の一部であることがこのソフトの特徴かと思われます。
本編ではうっすらとしか思い出すことのできなかった子供時代の話が読めるので、
４種ＥＤ制覇した後で是非一気に読んで欲しい。フローチャートも完備しておりそれが回想扱いに。
プロフィールでは自己紹介～プロポーズまで、様々な台詞が堪能できます。

くどい・昏い・絵が微妙…好みはあると思いますが、決して面白くない話ではありません。
主人公達の抱える 『トラウマ』 が非常にリアルで、人によってはかなりキツいものもあるでしょうが、
時間のある時に、じっくり腰を据え、諦めずに（笑）プレイして欲しい作品だなと思いました。
ＢＧＭや歌には力が入っていて種類も豊富なので、気に入ればサントラも欲しくなること請け合いです。
少しクセのある、シリアスな終末物語に浸りたい方…オススメですよ。