アマゾン・プライムビデオの配信を観て、原作アニメの豊かで奇妙な世界に惚れ込み、TOKYO MX等の放送を追うにわかファンです。
邦訳版のゲームが出るということで、前評判などを全く見ずに購入、先ほどクリアしました。

「原作付きの、いわゆるキャラゲーに期待してはいけない」というのは不文律のセオリーですが、
これが意外に中々、原作アニメファンのためのキャラゲーとしても、また古き良きゼルダライク作品（明言しちゃいますよ）としても、ソリッドで面白い出来栄えでした。
キャラゲーの常か、やや小規模（クリアタイムおよそ12時間）ではありますが、歯ごたえがないわけでは決してなく。
ほぼ同じシステムでいいので、よりボリューミーな続編が欲しい、とクリア直後の今既に思っているほどです。

まずゲーム面について。「海外の子ども向けの簡単な作りなのかな？」と思いきや、これがいい意味で裏切られましたね。
敵の行動と距離を計りながら、慎重に攻撃を繰り出す。
そんな緊張感のあるアクションゲーム的戦闘と、適度の長さでロジカルな謎解きに満ちた「見下ろし型ダンジョン」をしっかりと楽しめます。
ボス戦も（数は少ないですが）特徴豊かで、難しすぎず簡単すぎずの塩梅。

そしてグラフィック面の原作再現が素晴らしいです。
始終使い続けることになるフィンの攻撃モーションは、まさにアニメのあの「えいやーっ、うおーっ（メッチャクチャな剣振り）」なんですよ。それがちゃんとゲームの形に不自然でなく落とし込まれていることに注目です。
また相棒ジェイクの様々な挙動や、他のキャラクターたち…彼らが滑らかなドット画アニメで観られるだけで嬉しくなります。
ちなみにPSVitaのゲームアイコンはビーモ、ラストのスタッフロール曲は「あの曲」のレトロゲーム風リミックスですよ。
ツボをしっかり抑えているキャラゲーです。

ストーリーは、少し規模大きめのまとまったお話で、ちょっとした特別編といった風情です。
かといって「ATじゃない！」ということは決してなく、素晴らしいローカライズも合わさって、
「きちんとしたアニメの番外編」に位置づけられていると感じました。
あのキャラの出番少ないな…といったワガママは（これもキャラゲーの常のように）あるのですが、本作はフィンとジェイクのアドベンチャー・タイムのゲームなのですから、これでいいのかもしれません。
オリジナルキャラのプリンセス三人もステキです。プリンセスはこうでなくては。

登場人物は脇役も徹底してフルボイス吹き替え。
セリフのノリも原作準拠で、海外アニメ原作ゲームとしてのローカライズ面は十分と言えるでしょう。

ただ、ローカライズについてはゲームオーバー時の頼りないフォントなど、完璧とは言えない点も。テキストは適当なところで行変えすればより読みやすいかな、とか。
また、細かいバグ（ライフ0でも活動可能だった、敵が空中に浮いた）に遭遇したことも、購入検討者様のために明記しておきます。

Vita版について。ロードは大エリア切替時に6秒程度挟まりますが、「LOADING TIME」のロゴが毎度笑えます。長さ・頻度ともにプレイのストレスになるようなロードではありません。
トロフィー獲得は基本的に難しくないですが、リスト最後のひとつは中々の猛者です。

ごく身勝手な感想としては、「今の子どもにノーヒントでプレイしてほしいな…」だったり。
ロジカルなダンジョン、ほどよい難易度、いくつかのノーヒントさえも、本作を構成しているのは「昔懐かしい手応え」ばかりでした。
今のゲームに慣れた現代の子どもたちも、かつての自分と同じようにこの迷宮の謎解きを楽しんでくれるのだろうか…。
キャラゲーでありながら、そんなことに思いを馳せたりもしてしまった良作です。